島田先生の掘削レッスン④:傾斜掘り
傾斜掘りとは
傾斜掘りは、地表の掘削位置(井戸芯)から予め定められた計画軌跡に沿って、坑井の方位と傾斜角をコントロールしながら、目的とする偏距とサイズを持った地下のターゲット(目的位置)内に掘削する技術です。
また、既存の坑井の途中から別のターゲットに向かって、掘削を行うサイドトラック(枝掘)も同じ技術を用います。更に、垂直から掘削を開始した坑井を水平までコントロール掘削する「水平掘削技術」、掘削開始地点からより遠くまで掘削する「大偏距掘削技術」があります。
坑井の種類と傾斜掘り
地熱開発では、山岳地形による敷地造成の制約や坑井基地の集約化等の理由により、ほとんど全ての坑井が傾斜掘りで掘削されています。
地震観測井では、地震計を垂直に設置するため、傾斜角を3度程度にすることが求められています。この垂直コントロールも傾斜掘り技術を用います。
石油・天然ガス井では、遠く離れた油層めがけて掘削することがあり、偏距10,000mを超える坑井(大偏距掘井)もあります。
角度のコントロール
傾斜掘りは、坑井を曲げ始めるキックオフポイントまで垂直に掘削し、同所よりダウンホールモータのベントハウジングを指向する方向に設置して掘削を開始します。このベントハウジングの方向をツールフェイスといいます。
坑跡が一定の角度と方向を得たのちは、ダウンホールモータでそのまま掘削する方法または、掘削編成のスタビライザーの位置を変えることにより増角・沿角・減角を調整し、傾斜方位のコントロール掘削をおこないます。
坑井傾斜の計測
坑井傾斜の方位と角度、ツールフェイスは、シングルショット測定器またはMeasurement While Drilling(MWD)を用いて計測します。
シングルショット測定器は、坑内測定個所(非磁性ドリルカラー内)において傾斜と方位を示している測定部をカメラで撮影して、地上で写真を現像し計測します。
MWDは、非磁性ドリルカラー内に測定器を設置し、計測したデータをマッドパルスや電磁波パルスを用いて地上に伝えます。
マッドパルスは、掘削泥水の流れに制限を加えることにより圧力パルスを発生させ、地上でこのパルスを計測・解析してデータを伝送する技術です。
掘削技術専門学校における傾斜掘りの学習
傾斜掘り技術は、ほとんどの坑井掘削で用いられており、掘削技術の基本の一つとも言えます。
掘削技術専門学校では、傾斜掘りに使用するダウンホールモータ、非磁性ドリルカラー、シングルショット測定器などを所有しています。これらの実際に使用する機器を用いて、傾斜掘り技術の基本と機器の取り扱い方法などを学ぶことができます。
また、掘削掘り計画の立案や測定器で計測したデータから坑跡を計算する手法についても学ぶことができます。